先月3月は国際女性月間。そこでFacebookのさまざまな部署で活躍している女性たちにお話を聞いてみました。その第2弾はFacebook JapanのClient solutions ManagerでTeam Leadを務めるRieさんです。彼女は本業のかたわら、社内でD&I ― ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(多様性の受け入れ)の推進に取り組んでいます。Rieさん(古田理恵)からD&Iへの取り組みについて、いろいろと伺いました。一問一答形式でお送りします。
FacebookのD&Iカウンシルについて詳しく教えていただけますか。
さまざまな人が利用するサービスを提供しているFacebookでは、多様性のある組織はクリエイティブ(創造的)かつイノベイティブ(革新的)な考え方を生み出し、また、利用者の皆様のニーズを適切に察知してサービスに反映させることができると考えています。ですので、多様化の推進は「全ての社員を平等に」という倫理的な理由ももちろんありますが、同時にFacebookでは、「ビジネスを成長させる上で非常に重要な要素」ととらえていて、より生産性の高い組織をつくるためにマネージメント層や各社員に対してダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(多様性の受け入れ)の重要性を啓蒙しています。私は、フェイスブック ジャパンでそのような啓蒙を行うチームのプロジェクトの責任者を務めています。
Facebookの社員同士のつながりを強化し、距離を縮めるために、カウンシルではどのようなプログラムや推進活動を行っていますか。
Facebookでは、例えば広告営業の担当者やInstagramのユーザーグロース(利用者層の拡大)の担当者など、所属している組織の枠を超えて、共通の興味やバックグラウンドを持つ社員でコミュニティーをつくるということが自然に発生しています。例えば、フェイスブック ジャパンにおいても、女性社員とそれを応援する社員による「Women@」や、セクシャルマイノリティーをサポートする「Pride@」といったコミュニティーがあります。D&Iの活動は、そのようなコミュニティーと、マネージメント層やそれ以外の社員、人事部を結ぶハブのような役割を担っています。また、社外的にはNPOやNGOと共同でイベントなどの活動を行うこともあります。
D&Iの取り組み拡大の推進力は何ですか。
Facebookという組織としては、最初に述べた倫理的な観点からだけではなく、D&Iがビジネスの成長に不可欠だという理由が大きな推進力になっています。私の個人的なモチベーションの面では、昔からジェンダーやダイバーシティー、フェミニズムなどに興味があって、さまざまな読み物に触れたり、イベントに参加したりしてきましたが、いまだにFacebookから学べるものが非常に数多くあります。D&Iの取り組みや考え方は、特に日本の企業と比較するとFacebookは非常に進んでいると思っています。グローバルでの事例から学んだことをフェイスブック ジャパン内だけでなく社外にも反映して、もっと多くの人が多種多様な個性を生かしながら組織や社会に貢献できるような環境づくりをしたいと考えています。
ご自身が模範としている例や、程度にかかわらず違いを実感したことがありましたら、そのエピソードをお聞かせください。
3、4年前に私がフェイスブック ジャパンのD&Iを立ち上げた当初は、会社の規模が小さかったこともあるのですが、社員の関心も低く、ワーキングマザーが少なく、男性の育休取得例も多いとはいえませんでした。これまでのD&Iの活動を通して、ワーキングマザーやワーキングファザーの数が増え、認知されるようになり、組織としてサポート体制が強化されていると実感しています。例えば、出産前の社員が保育園探し(保活)の激戦区に住んでいて説明会の予約電話でさえつながらないということを知りました。そこで周りの社員数名で保育園に電話をかけ、彼女をサポートしたことがあります。そのうちひとりの電話がつながり、無事に説明会の予約を取ることができました。これは、Facebookのオープンでサポートし合えるカルチャーを象徴しているような出来事だと思いました。このようなサポートによって、彼女は悩みをひとりでずっと抱えることなく、みんなの協力や理解も得ながら業務に復帰でき、それが結果的にビジネスの成長につながります。 また、数年前にはなかったセクシャルマイノリティーをサポートする「Pride@」が日本オフィスの社員によって立ち上がったことも大きな成果です。
職場のインクルージョン(多様性の受け入れ)を発展させるために普段実践していることは何かありますか。
いくら職場の多様性が進んでも、インクルージョンが進まないことには多様性の良さを生かすことはできません。Facebookでは、職場のインクルージョンを深めるためにいくつかのトレーニングを実施しています。例えば、「Managing Unconscious Bias」(無意識のバイアストレーニング)は、仕事の成果に対する評価に男女間の格差が発生したり、子どものいる社員に重要な仕事が与えられなかったりなど、個人それぞれが持つ無意識の思い込みによって成果が過小評価・過大評価されるといった問題を防ぎます。また、「Be the ally」(仲間になろう)は、少数派の人々の意見や存在が軽視されている場面に直面したとき、周りがきちんと気づき、指摘し、改善につなげようという考えに基づいたトレーニングです。例えば、新しくチームに入ったメンバーがミーティングでなかなか発言できていないような状況があった場合、マネージャーや同僚が気づいてあげて、そのメンバーに意見を促し、フォローアップしたりすることを通して、多角的な意見交換ができる組織づくりを目指しています。
D&Iに取り組む上で何か特別な活動は行っていますか。
対外的な活動としては、Pride@でNGOやNPOと共同でイベントやレインボーパレードに参加したり、また、社外イベントなどで女性活躍推進をテーマにFacebookの取り組みについて話したりしています。
女性たちが互いにこれまで以上に支え合い、励まし合えるようにするためにどんな行動をすればよいのか、何か提案はありますか。
何か困ったときも、何か上手くいったときにも、積極的に発信してほしいと思っています。世の中には男性のサクセスストーリーは多く存在しているのですが、女性の場合は成功しても大々的に発信しない傾向があるからか、なかなか女性のサクセスストーリーを知る機会がありません。小さなことでも悩みを発信すれば、それをサポートする人が出てくると思います。また、ささいな成功体験でも、それが他の女性の大きな参考になり、それぞれが小さなロールモデルになる可能性があります。私も最初は自分の体験談や成功体験をインターネットなどに投稿することに大きなためらいがありましたが、いざしてみると、非常に多くのひとから応援のメッセージをいただくことができ、実は共感してくれる人がたくさんいることに気づきました。